シェフのひとりごと
January 26, 2009
パリ土産
昨年(2008年)の6月、「さて」はおよそ一ヶ月のお休みをいただき、フランスに行って来ました。何とか現役の料理人であるうちに行きたかったのです。毎日パリの街角の気取らぬ店で食事をしたり、住まい近くの総菜屋さんで買い求めたおかずや野菜とワインとバゲットで夕食にしたりと、ひとときパリジャンの気分に浸りました。
やさしい木の風合いの「さて」のカトラリーでしたが、25年使い込んですっかり傷んで数も減ってしまったので、何とか良いものを手に入れたかったのですが、パリの合羽橋といった通りの店で、気に入ったものを買い求めることができました。また、クロス用の生地も問屋街で手に入れ、妻の手でクロスに仕立ててもらい、「さて」の気分も少し変わりました。窓外のスペースにも紺のテーブルクロスにセッティングして、テラスの雰囲気を気取っています。しかし、24組のナイフ・フォーク・スプーンに布地、さらにワインを加え、帰りの荷物の何と重かったこと!その上、帰国の飛行場への地下鉄を乗り間違え、30kgの鞄を抱えて、恐ろしい勢いで駅の階段を昇り降りしたものでしたが、この時も乗り合わせたご婦人に親切に乗り換え案内をしていただき、異国での優しさに感激しました。
パリの他、3カ所のワイン銘醸地も訪ねてきました。地方でも、とにかく人々の優しさに触れました。トロワの宿で紹介してもらったシャンパーニュの小さなワイナリーの親父さんは、ジャン・ギャバンの如き風貌で、無口で頑固そうな人でしたが、そこでいただいたシャンパーニュの美味しかったこと!忘れることができません。自分の畑で育てた葡萄で、自分が最高と思えるやり方で、品種を選び組み合わせ、ワインを作り上げてゆく姿に感銘を受けました。このシャンパーニュを何とか「さて」のワインリストに加えたいものと、その方策を思案中です。輸入実現の暁には是非皆さんに飲んでいただきたいものです。
もう一つのフランス土産はパリのサンジェルマン・デ・プレ近くの総菜屋さんで買い求めたリエット(鴨や豚の肉を煮てペースト状にしたもの)を「さて」のメニューに加えることでした。ようやく年末に完成することができました。パンとワインとの相性が抜群です。フランスではどの町でもスーパー(50gほどでも量り売りしてくれます!)や総菜屋さんに置いてありましたが、こんな美味しいものが日本ではほとんど見かけることがないのは不思議なくらいです。朝にバゲットに塗って、晩はワインと一緒に、食事が一層楽しくなります。
どうやら、ほんの少しだけですが、フランスでの体験が」「さて」に生きています。
August 31, 2004
21年目
21年目の『さて』は「もっとおいしく、もっと多くのお客様に味わっていただけるよう、素材を吟味して、素材のおいしさを際だたせる調理を、さらに、さらに探求して行きます。当たり前のことを(おいしさのためにはやらねばならぬことを)、当たり前に、真っ当にやり続けようと思います。また、店内の壁をギャラリーとして活用して、優れた作品の紹介のスペースを提供できればと考えています。6月にはその第一回の試みとして、7人による「小さな写真展」を開催しました。
June 30, 2003
全粒粉のパン
これまでは料理への力がそがれるのではとの思いから、パン作りには手を染めないで来ました。けれど、よりおいしくて、なおかつ「さて」の料理の邪魔になるどころか、引き立ててさえくれるパンが提供出来ないものかと考えておりましたところ、全粒粉に出会いました。全粒粉は大変栄養化が高いだけでなく、香ばしさが食欲をそそります。そこで今回のイメージはパン作りへの挑戦です。
January 08, 2002
生ハムが食べ頃になりました
何度か肉を包んだシートを変えて水気をふきとったりしながら、「おいしくなれよ、おいしくなれよ」と祈りつつ、待つこと一ヶ月。昨年の12月初旬に仕込んで、熟成を続けてきた生ハムがようやく、燻煙の焦げた感じや、ややとがった塩加減がすっかり丸みを帯びて、おいしさに包まれてきました。最初につけ込む塩の濃度も、塩抜きの具合も、寒さの増してくる冬に年に一度だけしか仕込むことができませんが、試行錯誤の繰り返しです。今回も何とか求めるものに”近い”味を得られたように思います。【さて】では今、「生ハムのピザ」や「生ハムのサラダ」として冬のメニューに彩りを加えていますので、ぜひお召し上がり下さい。
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